饒舌映画ブログ

誰もが、映画をめぐってひたすら饒舌であったときの快楽を知っている。同時に、その果てに待ち受けている徒労の実感をも体験している。映画によって言葉を根こそぎ奪われた瞬間の無上の甘美さをたぶん、あなたは知っているだろう。そして、その沈黙にいつまでも耐え続けることの息苦しさをも知っているに違いない。欠語と饒舌のいずれを選ぼうとも、救われたためしなどかつてありはしなかったのだ。――『リュミエール』誌 《創刊の辞》より

【News】生誕100年 映画監督 加藤泰

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 生誕100年を記念し、東京国立近代美術館フィルムセンター加藤泰の大回顧特集が7月12日から始まる。上映はすべてフィルムでなされるようで、音声が飛んでしまっている作品もそのままかかるようだ。地方市民からすればムカつくほど羨ましい超豪華なレトロスペクティブだが、幸いなことに、特集は9月4日まで続くという。夏の旅行の選択肢に入れてみるのもありだろう。学生は夏フェスなど行ってないで、フィルムセンター前にテントを張るべきである。学生なら310円、大人一般でも520円で楽しめる。

 

《作品リスト》

1.剣難女難 第一部 女心流転の巻/潛水艦/羅生門[予告篇] (計90分)

2.剣難女難 第二部 剣光流星の巻 (71分・1951・宝プロ・監:加藤泰)

3.清水港は鬼より怖い (79分・1952・宝プロ・監:加藤泰)

4.ひよどり草紙 (86分・1952・宝プロ・監:加藤泰)

5.忍術児雷也 (80分・1955・新東宝・監:萩原遼加藤泰)

6.逆襲大蛇丸おろちまる (70分・1955・新東宝・監:加藤泰)

7.恋染め浪人 (84分・1957・東映京都・監:加藤泰)

8.源氏九郎颯爽記 濡れ髪二刀流 (87分・1957・東映京都・監:加藤泰)

9.緋ざくら大名 (82分・1958・東映京都・監:加藤泰)

10.源氏九郎颯爽記 白狐二刀流 (87分・1958・東映京都・監・脚:加藤泰)

11.風と女と旅鴉 (90分・1958・東映京都・監:加藤泰)

12.浪人八景 (95分・1958・東映京都・監:加藤泰)

13.紅顔の密使 (89分・1959・東映京都・監・脚:加藤泰)

14.大江戸の俠児 (87分・1960・東映京都・監・脚:加藤泰)

15.あやめ笠 喧嘩街道 (71分・1960・第二東映京都・監:加藤泰)

16.炎の城 (99分・1960・東映京都・監:加藤泰)

17.朝霧街道 (83分・1961・第二東映京都・監:加藤泰)

18.怪談 お岩の亡霊 (94分・1961・東映京都・監・脚:加藤泰)

19.瞼の母 (83分・1962・東映京都・監・脚:加藤泰)

20.丹下左膳 乾雲坤龍の巻 (95分・1962・東映京都・監:加藤泰)

21.真田風雲録 (100分・1963・東映京都・監:加藤泰)

22.風の武士 (95分・1964・東映京都・監:加藤泰)

23.車夫遊俠伝 喧嘩辰 (99分・1964・東映京都・監・脚:加藤泰)

24.幕末残酷物語 (100分・1964・東映京都・監:加藤泰)

25 .明治俠客伝 三代目襲名 (90分・1965・東映京都・監:加藤泰)

26.沓掛時次郎 遊俠一匹 (90分・1966・東映京都・監:加藤泰)

27.骨までしやぶる (88分・1966・東映京都・監:加藤泰)

28.男の顔は履歴書 (89分・1966・松竹大船・監・脚:加藤泰)

29.阿片台地 地獄部隊突撃せよ (92分・1966・ゴールデンぷろ・監・脚:加藤泰)

30.懲役十八年 (91分・1967・東映京都・監:加藤泰)

31.虱は怖い/剣 縄張しま (計64分)

32.みな殺しの霊歌 (90分・1968・松竹大船・監:加藤泰)

33.緋牡丹博徒 花札勝負 (98分・1969・東映京都・監:加藤泰)

34.緋牡丹博徒 お竜参上 (100分・1970・東映京都・監・脚:加藤泰)

35.緋牡丹博徒 お命戴きます (93分・1971・東映京都・監・脚:加藤泰)

36.昭和おんな博徒 (91分・1972・東映京都・監:加藤泰)

37.人生劇場 (167分・1972・松竹大船・監・脚:加藤泰)

38.花と龍 (168分・1973・松竹大船・監・脚:加藤泰)

39.宮本武蔵 (148分・1973・松竹大船・監:加藤泰)

40.日本俠花伝 (150分・1973・東宝・監・原・脚:加藤泰)

41.江戸川乱歩の 陰獣 (117分・1977・松竹・監・脚:加藤泰)

42.炎のごとく (147分・1981・大和新社・監・脚:加藤泰)

 

 加藤泰は、言うまでもなく、作家主義的なシネフィル映画史観では「時代劇」の作家とされる映画監督だが、ミーハーな映画ファンのご多分に漏れず、筆者は「緋牡丹お竜」こと緋牡丹博徒シリーズでの仕事しか知らない不届き者である。なので、あまり偉そうなことは言えないどころか、こんなニュース記事を書くことさえ気後れするのだが、ちょっと前に東映の任侠映画にハマり、由緒正しいシネフィルである当時の恋人や友人らのひんしゅくを買った責任の一端は間違いなく加藤泰にある。

 

 

 調子に乗って断言しておくと、緋牡丹博徒シリーズの最高傑作は加藤泰が手掛けた『花札勝負』である。『お竜参上』、『お命戴きます』も傑作と呼び得る最高水準にある作品だが、『花札勝負』を初めて見た時の衝撃は忘れがたい。あの殺人的なローアングルは映画のど素人にも衝撃的で、こんなショットがあるのかと腰を抜かした。特に、最後の突入シーンは何度も何度も見返した。あの躍動をフィルムで観たい、という素朴な欲求もあるが、せっかくならばソフトで出回っていない時代劇の傑作を観てみたい、という思いもある。

 しかし、羅針盤があまりにも不足している。当てずっぽうで観るには膨大な数だ。必見の作品などあれば、是非ともコメント欄にて推薦願いたい。