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饒舌映画ブログ

誰もが、映画をめぐってひたすら饒舌であったときの快楽を知っている。同時に、その果てに待ち受けている徒労の実感をも体験している。映画によって言葉を根こそぎ奪われた瞬間の無上の甘美さをたぶん、あなたは知っているだろう。そして、その沈黙にいつまでも耐え続けることの息苦しさをも知っているに違いない。欠語と饒舌のいずれを選ぼうとも、救われたためしなどかつてありはしなかったのだ。――『リュミエール』誌 《創刊の辞》より

【月報】Filmarks – February / March / April 2016(+月間アクセス・ランキング)

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 「どんなに忙しくてもこれだけは更新しよう」と思っていたこの月報コーナーすら、3ヶ月も放置していた。この事実だけで、どのような時間を過ごしていたかはご想像いただけると思う。「時間があまりにも・・・・なさすぎる」と1月に書いたが、それでもまだマシだったのだと気づいたのが2月だった。そこから先はあまり記憶がない。何より、スピルバーグの『ブリッジ・オブ・スパイ』を見逃し、友人のひんしゅくを買ったのがこの3ヶ月だった。そんな中で、少しずつ気力を取り戻しながら観たのが以下の28本。特に良かったものを赤字で示しています。 

 

【劇場】

ブラック・スキャンダル』(Black Mass, 2015)スコット・クーパー

ヘイトフル・エイト』(The Hateful Eight, 2015)クエンティン・タランティーノ

『キャロル』(Carol, 2015)トッド・ヘインズ

『ロブスター』(The Lobster, 2015)ヨルゴス・ランティモス

ズートピア』(Zootopia, 2016)バイロン・ハワード/リッチ・ムーア

『ルーム』(Room, 2015)レニー・アブラハムソン

  

【DVD】

キッスで殺せ!』(Kiss Me Deadly, 1955)ロバート・アルドリッチ

『人生スイッチ』(Wild Tales, 2015)ダミアン・ジフロン

『あの日のように抱きしめて』(Phoenix, 2014)クリスティアン・ペッツォルト

『地獄の英雄』(Ace in the Hole, 1951)ビリー・ワイルダー

『ネットワーク』(Network, 1976)シドニー・ルメット

『タクシードライバー』(Taxi Driver, 1976)マーティン・スコセッシ

ザ・ドライバー』(The Driver, 1978)ウォルター・ヒル

あの頃ペニー・レインと』(Almost Famous, 2000)キャメロン・クロウ

『人生はローリングストーン』(The End of the Tour, 2015)ジェームス・ポン・ソルト

ワイルドバンチ』(The Wild Bunch, 1969)サム・ペキンパー

『わたしに会うまでの1600キロ』(Wild, 2014)ジャン=マルク・ヴァレ

『DIG!』(Dig!, 2004)オンディ・ティモナー

悪魔とダニエル・ジョンストン』(The Devil and Daniel Johnston, 2005)ジェフ・フォイヤージーク

『荒野のガンマン』(The Deadly Companions, 1961)サム・ペキンパー

砂漠の流れ者』(The Ballad of Cable Hogue, 1970)サム・ペキンパー

『ロングタイム・コンパニオン』(Longtime Companion, 1989)ノーマン・ルネ

ダラス・バイヤーズクラブ』(Dallas Buyers Club, 2013)ジャン=マルク・ヴァレ

『はなればなれに』(2012)下手大輔

みんな!エスパーだよ!』(2015)園子温

『15ミニッツ』(15 Minutes, 2001)ジョン・ハーツフェルド

コラテラル』(Collateral, 2004)マイケル・マン

ナイトクローラー』(Nightcrawler, 2014)ダン・ギルロイ

  

 こうやって改めてリストにして並べてみると、真っ先に思い出すのは『キッスで殺せ!』における冒頭のシークエンスだ。特に、裸足で路上を疾走する何者かの足元だけを捉えたオープニング・ショットは衝撃的だった。手法としては、走っている人間の足元を移動撮影で切り取っただけなのだろう。であればなおのこと、映画の新しさとは斬新な技法ではなく、あくまでも作家のセンスから来るものだということになる。実際、この3ヶ月は同時代の作品を意識的に多く観たが、あのオープニング・ショットほど記憶に残るショットはほとんど皆無であったと言っていい。ロバート・アルドリッチは今や、フィルモグラフィーを再体験する意欲よりも、それに手を付けてしまうことの勿体なさが上回っている。

 その他、作家という単位で意識していたのは、強いて言うならサム・ペキンパージャン=マルク・ヴァレである。義務、契約、徒労・・・・通算5作を観終わり、ペキンパーをめぐるこれらのキーワードの意味がようやく分かってきたように思うが、特に『ワイルドバンチ』を見終わった後の疲労感はハンパじゃなかった。西部劇の神話が潰えた荒野の終わりに、男たちは死に場所を見つけられずにいる。『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』との二本立てレイトショーなどがあれば迷わず駆けつけるだろう。ジャン=マルク・ヴァレに関しては、正直まだよく分からない。が、人間を俗の側から捉えようとする態度には好感が持てる。『カフェ・ド・フロール』を近々観てみる予定である。

 あとは、映画を観たり音楽を聴いたりする時間が少しずつ戻ってきたということもあり、学生時代の青春映画『あの頃ペニー・レインと』を観直して「はて、自分にとって音楽とは何であったか」と感傷に浸った。姉が親を捨てて実家を飛び出す場面でかかるのが、サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」というのは何度見てもすごい。アメリカ人が、アメリカを探しに行く・・・・不在郷としての、存在しない理想のアメリカを探しに。なんてこんがらがっていて、なんてロマンティックなんだろう。ポップ・ミュージックは凄まじい進化をたった今この瞬間にも遂げているが、あのようなロマン主義に相応しい音楽は、ロックを除いていまだ存在しない。

 さて、このリストの中で必見の2本を選べと言われれば、それなりの苦悩の後に、『キャロル』と『コラテラル』の名を挙げるだろう。『キャロル』については、映画がただ映画であることの贅沢を教えてくれる甘美な傑作である。向かい合っている人間を切り返しショットの繰り返しで捉えただけのモンタージュが、ここまで観る者に感染し、頬を紅潮させる作品はあるまい。二度目を観た後に満点・最高評価のレビューをアップする気でいたが、残念ながら書きかけで止まっている。『コラテラル』については、主題とかで悩みすぎな昨今の(主にスーパーヒーロー系の)アメリカ映画を否定すべき根拠となる素晴らしい「映画」だ。今すぐにでも『ヒート』を観なくてはならないが、早くもそれに手を付けてしまうことの勿体なさが募っており、どうするか悩んでいる。

  

【2016年2~4月のアクセス・ランキング】(上から1位→5位)