饒舌映画ブログ

誰もが、映画をめぐってひたすら饒舌であったときの快楽を知っている。同時に、その果てに待ち受けている徒労の実感をも体験している。映画によって言葉を根こそぎ奪われた瞬間の無上の甘美さをたぶん、あなたは知っているだろう。そして、その沈黙にいつまでも耐え続けることの息苦しさをも知っているに違いない。欠語と饒舌のいずれを選ぼうとも、救われたためしなどかつてありはしなかったのだ。――『リュミエール』誌 《創刊の辞》より

★★★1/2

是枝裕和監督『海よりもまだ深く』

『海よりもまだ深く』(After the Storm, 2016)是枝裕和 凍らせたカルピス、凍らせたカレー、乾麺、あるいは墨といった、「温めるなり、とかす(融かす/溶かす)なりしなければ使いようのないもの」が、日常生活の中で度々登場する。その演出意図はおそら…

レニー・アブラハムソン監督『ルーム』

『ルーム』(Room, 2015)レニー・アブラハムソン 冒頭、被写体との距離が近すぎるのだろう、まるでピントの合っていないショットが無造作に連ねられる。モノは確かにそこにあるのに、近すぎて逆に見えない。そう、それこそが、生まれてからの5年間、「部屋…

橋口亮輔監督『恋人たち』

『恋人たち』(2015) 橋口亮輔 誰しもが止まった時計を見つめながら、過去の思い出の中を生き、「ソフトに死んでいる」――。橋口亮輔監督、待望の長編『恋人たち』では、そのような3人の男女がカメラに収まっている。周知のように、それらの中心人物を演じ…

ペイトン・リード監督『アントマン』

『アントマン』(Ant-Man, 2015) ペイトン・リード ヒップスターはアウトローの代用だ。ヒップスターというのは、毒抜きした犯罪者であり、犯罪を犯さずに犯罪へと近づくものだ。 ――ジョン・リーランド著『ヒップ――アメリカにおけるかっこよさの系譜学』より…

デミアン・チャゼル監督『セッション』

『セッション』(Whiplash, 2014) デミアン・チャゼル 星野源だの福山雅治だの、あるいは売り出し中の無味乾燥なギター・ロック・バンドのベーシストなんかを「変態」と呼ぶ文化には苦笑すら浮かべられぬような人間からすれば、この『セッション』(Whiplas…

ピーター・ソレット監督『キミに逢えたら!』

『キミに逢えたら!』(Nick and Norah's Infinite Playlist, 2008)ピーター・ソレット 気になる女の子に自作のラブソングを捧げるのが「激痛!」なら、菊地成孔が言うところの「大激痛!」に相当するのは、自作のミックスCDを贈ることだろう。なんせそれは…

ウディ・アレン監督『ギター弾きの恋』(Review)

『ギター弾きの恋』(Sweet and Lowdown, 1999) ウディ・アレン ウディ・アレンのフィルモグラフィーにおいては、ウディ・アレンが役者として出しゃばっていない作品の方が名作であることが多く、その例外ではないこの『ギター弾きの恋』も、その後、それぞ…

メル・ブルックス監督『ブレージングサドル』(Review)

『ブレージングサドル』(Blazing Saddles, 1974) メル・ブルックス 思わず「こ・れ・は・ひ・ど・い」の一言で終わりにしたくなる、西部劇×ミュージカル×ブラックスプロイテーションという掛け合わせの異色作である。クエンティン・タランティーノの『ジャ…

バート・ケネディ監督『女ガンマン・皆殺しのメロディ』(Review)

『女ガンマン・皆殺しのメロディ』(Hannie Caulder, 1971) バート・ケネディ ともすればタランティーノの『ビルを殺せ』の主たるネタ元として面白半分で評価されているかに思える、紛れもなく「B級西部劇」であるこの映画が、それでもなお「映画」たり得…